■「企業の目的に気づく」稲盛和夫
私は、会社を創業して1年たって、
大変なことを始めてしまったということに気がつきました。
私たち創業メンバー8名は、
自分たちの技術が世に認められるかどうか試してみたいと考え、
会社を始めたのですが、最初に採用した若い人たちは、
自分の一生を会社に託そうと思っていたのです。
このギャップは、
従業員にとって不幸な将来を招くことが予想されました。
そのため私は、
「会社とは何か」ということについて、真剣に考えさせられました。
会社を通じて人生に夢を描いている人たちの
期待を絶対に裏切るわけにはいきません。
そのとき以来私は、経営の基本を、
自分の技術の試行ということから、
「全従業員の物心両面の幸福の追求と人類社会の進歩発展への貢献」
に変えたのです。
つまり、会社で働く全員、またその家族を含めた人たちの生活を守り、
幸せな人生を送ってもらうことをまずは経営の柱とし、
そしてこれに留まらず、私たちの技術をもって科学技術の進歩に貢献し、
また利益の一部を税金として納入することで、
公共の福祉等に貢献し、人類の進歩の一助となることを目的としたわけです。
これ以外に、企業の目的はないと、私は思っています。
■「経営の3つの目的」
「経営の目的とは何なのか?」
に対する答えをまとめると、こういえると思います。
①人間性の追求
②社会性の追求
③経済性の追求
前述ように、
「『全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、
人類、社会の進歩発展に貢献する』これ以外に、企業の目的はない」
と稲盛和夫氏は言います。
これはつまり、
①人間性の追求(社員の幸せの追求)と、
②社会性の追求(社会への貢献)といえます。
そして、この2つの目的を達成するために必要な手段として、
③経済性の追求が必要になるのだと思います。
これをもう少しシンプルにいうと、
経営の目的とは
「社員を幸せにすること」と「社会に役立つこと」なのです。
つまり、経営の一番の目的は「社員を幸せにすること」といえます。
社員を幸せにすること以外に、経営の目的はないのです。
逆の言い方をすると、
「会社とは、社員を幸せにするための手段である」
と言い換えることができます。
また、社員を幸せにすることが経営の目的であれば、
社員が幸せでないなら、会社をやめるべきということです。
なぜなら、会社の本来の目的から外れているからです。
経営の一番の目的である「社員を幸せにすること」は
「社会に役立つこと」で成り立ちます。
経営を通じて社会に役立つことで、感謝され、お金がもらえます。
そのことによって社員は幸せを感じられるのです。
一方で経営の目的を「利益を出すこと」とすれば
社員は利益を出すための「道具」となります
これは、経営の目的を何にするかによって
物事の見方、判断の仕方が違ってくる
ということを言っています
つまり、
経営の目的を「社員を幸せにすること」とすれば
社員を幸せにする判断をします
しかし、経営の目的を「利益を出すこと」とすれば
社員は利益を出すための「道具」となり
社員は幸せになりません
逆に社員を犠牲にして会社が成り立ちます
同じ会社でも
経営の目的によって、180度違う経営になるわけです
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「企業の目的は顧客の創造である」P・F・ドラッカー
この文章、有名ですよね
たくさんの人がよく使っています
でも、実は原文にはこう書いてあります
There is only one valid definition of business purpose: to create a customer.
Peter Drucker (ピーター・ドラッカー)
ビジネスの目的の正当な定義はただひとつ。
顧客を作り出すことである。
よく読むと、business purposeとあります
この訳を「企業の目的」とするか、「ビジネスの目的」とするかで
解釈の仕方が違ってくるのです
「ビジネスの目的」、つまり商売の目的は、顧客を作り出すことであり
利益を出すことではない
しかし、「企業の目的」は
(1)人を幸せにし
(2)社会に貢献し
そのために
(3)利益を出すことなのです
これが「経営の3つの目的」
①人間性の追求
②社会性の追求
③経済性の追求
となります
だから、企業の目的は利益の追求だけではないのです
「事業体とは何か」を問われると、
たいていの企業人は「利益を得るための組織」と答える。
たいていの経済学者も同じように答える。
しかし、この答えは、間違いであるだけではない。
的外れである。
P・F・ドラッカー
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つまり
(1)ビジネスの目的は「顧客の創造」 P・F・ドラッカー
(2)経営の目的、企業の目的は
①人間性の追求
②社会性の追求
③経済性の追求
だから
経営の目的は、「顧客の創造」ではない
経営の目的は、「利益の追求」だけではない、ということ