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値決めは経営、値決めはトップの仕事

値決めは経営、値決めはトップの仕事

お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点である

 

私はかつて京セラの役員を登用する時、

商いの原点がわかっている人でなければならないと考え

その登用試験として「夜泣きうどん屋を経営」を考えたことがあります

 

うどん屋の屋台の設備が買えるくらいの資金を役員候補に渡し

彼らに商売をさせてみて何ヶ月後かに資金をどれだけ増やして帰ってくるか

それを競わせようとしたのです

 

なぜ、そのようなことを考えたのか

私は屋台のうどん屋の商売に、経営の極意が全て含まれていると考えたからです

 

例えば、うどんを出すとすれば、

出汁は何からどのようにして取るのか、麺は機械打ちにするのか手打ちにするのか

 

さらに具のかまぼこはどれくらいの厚みのものを何枚載せるのか

ネギはどこで仕入れてくるのかなど、たくさんの選択肢があり

それがそのままコストに跳ね返ってきます

 

つまり、うどん一杯とは言え、千差万別、

経営する人によって全く違った原価構成のものになっていくわけです

 

また次には、そのうどん屋の屋台を、

どこに置き、いつ営業するのかと言う出店立地の問題があります

 

繁華街で酔っ払い客を狙うのか、学生街で若者をターゲットとするのか

全てその人の才覚が現れるのです

 

そして、そのような諸条件を全て決定して、その上で「値決め」があるわけです

学生街で商売をしようとする人は、売値を抑えて数をたくさん売ろうとするでしょうし

 

繁華街では高くてもおいしい、高級感あふれるうどんにして、

数は少なくても利益が出るようにしようとする人もいるでしょう

 

製品の価値を正確に判断した上で、製品1個当たりの利幅と販売数量との積が極大値になる

ある一点を求め、それで値決めをしなくてはならないのです

 

私は、その一点とは、お客様が喜んで買ってくださる最高の値段でなければならないと考えています

 

 

■ですから私は、「新しい製品や技術を開発するのが技術の仕事だと思っているのかもしれないが

それだけではない、どのようにしてコストを下げるか、ということを考えることも、優秀な技術屋の仕事だ」

と言うことを技術者たちに繰り返しいい、コストダウンへの取り組みを強く促してきました

 

熟慮を重ねて決められた価格の中で、最大の利益を乱すような経営努力が必要となってきます

その際には、材料費がいくら、人件費がいくら、諸経費がいくらかかるといった、

固定概念や常識は一切捨て去るべきです、

 

資料や品質など、与えられた要件を全て満たす範囲で、

製品を最も低いコストで製造する努力を、徹底して行うことが不可欠です

 

その時に大切な事は、値決めと仕入れ、また製造のコストダウンが連動していなければならないと言うことです

決して値決めだけが独立してあるのではありません

 

値決めを決定すると言う事は

仕入れとコストダウンにも責任を持つということなのです

 

これも、「値決めはトップが行うべき」と言うことの理由の1つです

 

つまり、値決めをする瞬間に、もう仕入れと製造のコストダウンのことを考えていなければなりませんし

逆にそれらのことが頭の中にあるからこそ、値決めができるわけです

 

値決めは経営であり、それは経営者の仕事であり、

さらにはその価格設定は経営者の人格のままに現れると言うことををよくご理解していただき

素晴らしい経営を目指していただきたいと思います

 

稲盛和夫

 

■経営のヒント

 

・うどん屋の例では

 

仕入れ =だし、麺、かまぼこ、ねぎ

販売  =顧客層、学生、繁華街の人

立地・営業時間  =繁華街、夜 

 

などの条件で値決めが無限にあることを説く

 

値決めと仕入れ、また製造のコストダウンが連動していなければならない

値決めだけが独立しているのではない

 

値決めは経営

値決めに社長の人格が現われる

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